ESBL尿路感染症にはPIPC/TAZ使える?
《背景》
そもそも,Vitro(試験管内)での効果としては,PIPC/TAZ(PT)は効果的(S)となることがほとんどです.
けれども,MERINO trialという研究では,菌血症の患者さんではMEPM(メロペネム)と比較して非劣勢を示せず,ハードアウトカムとしての死亡率を上昇させました.
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2702145
この研究以降,ESBL菌血症に対しては,PTでは不十分ではないかということで,CMZ(セフメタゾール)やMEPMが使われることになりました.
FOMX(フロモキセフ)という選択肢もありますが,臨床的にCMZ以外の有用性がないため,ほとんど使われることがなく,そして高価な薬剤です.
以前,CMZが出荷停止になった際に,バイタルが安定しているESBLの治療として使ったことがありますが,普通に治療できていたように思います.
《疑問点》
MERINO trialでは,菌血症が対象でしたが菌血症以外のESBLに対してはどうなのだろうか?
というのは,以前から気になっていた点でした.
《今回の研究》
https://academic.oup.com/jacamr/article/5/3/dlad055/7160126
ESBL尿路感染症に対して,MEPMと比較してPTで治療可能かという研究です.
デザイン自体は,MERINO trialからはだいぶ劣るデザインで,後方視的観察研究です.
100名づつをMEPMとPTにマッチングし,比較検討されています.
主要評価項目も,微妙な48時間以内の臨床的治療成功を比較しています.
結果は,有意差なしということで尿路感染症にPTは使えるかもね,という結果でした.
しかしいろんな限界点があり,この研究結果によりESBLに対して,じゃあPTで治療できるね,ということにはならないと思います.
ただ,MEPMまで使う必要性があるのか微妙な患者さんの場合は,PTも選択肢に入れるということも検討されるということは言えるのかもしれません.
今回の研究では,菌血症も約25%で尿路感染症の割には少ない印象を受けます.