〇〇病院診療看護師(NP)のお勉強用

ただ勉強した内容のシェア(たまに活動報告)

成人の非骨傷性頚髄損傷のマネジメント

www.mdpi.com

 

脊髄損傷(SCI)は、神経機能の喪失をもたらし、患者の生活の質に重大な影響を与え、経済的な損失も招く重篤な状態です。特に高齢者では脊椎管狭窄症の存在が影響を与えている可能性があります。この中でも特に注目すべきなのが、高齢者において脊椎管狭窄症が原因で発生する主要な骨折のない頚椎脊髄損傷(CSCI)の増加です。

 

1. 頚椎脊髄損傷と脊椎管狭窄症の関連

CSCIの患者の特徴は、過去40年間で平均患者年齢が上昇し、全体の中で骨折のない、不完全な、または部分的な損傷しか持たない患者の割合が増加していることです。特に日本では、70代の患者が最も多く、そのうちの70.7%が軽度な外傷によるもので、主要な骨折がないCSCIが占めています。

 

2. 脊椎管狭窄症とCSCIの関連

脊椎管狭窄症(CSCS)は、OPLL(後側縦靭帯の骨化)や先天的な狭窄、椎間板の膨らみ、黄色靭帯の石灰化など、さまざまな病理的要因によって引き起こされます。これらの要因がCSCSを引き起こすことで、CSCIのリスクが増加する可能性があります。日本の研究では、CSCI患者のうち86%と74%がCSCSを有していたと報告されています。特にOPLLの有病率は39%から34%までさまざまであり、これは欧州諸国よりも高い傾向があります。MRIの測定では、脊髄-管不一致(脊髄が脊椎管内で占める割合が高い)がSCIに対する個人の感受性を示唆しています。

 

3. MRIの臨床的な意義

CSCIの患者の多くはMRIで脊髄の信号強度が増加しており、この増加が神経学的転帰と関連しているとの研究があります。また、後方脊柱の軟部組織と靭帯の損傷も神経症状の重症度と結果との関連で重要です。脊髄の圧迫度と神経転帰の関連性については意見が分かれており、これに加えて遅れたMRIが臨床的な症状の重症度をより正確に反映する可能性があることが示唆されています。

 

4. 保存的療法と手術治療の選択と最適なタイミング

CSCI患者の管理において最も重要な問題は、「手術が必要か否か」という点で、これについては国際的な脊椎外科医の間で意見が分かれています。また、手術のタイミングやMRIの可用性、予後因子などについても合意が得られていません。保存的療法と手術療法の比較や、手術の早期実施が神経学的転帰に対して有益かどうかなど、未解決の臨床的な質問が残っています。

 

5. 手術プロシージャ: 前方と後方アプローチ

手術のアプローチには前方と後方があり、それぞれ利点とリスクが存在します。前方手術は不安定性を軽減できますが、複数の椎体セグメントの融合が必要となり、これによって運動機能の喪失が生じる可能性があります。後方ラミノプラスティは前方手術よりも広範な減圧を提供でき、運動セグメントを保持できますが、一部の患者では頸椎不安定性を引き起こす可能性があります。

 

6. 保存的治療とリハビリテーションの管理

保存的治療では、急性期に頚部を固定するための剛性カラーの使用が一般的ですが、これについては近年異論も存在します。また、リハビリテーションは患者の機能的な回復に不可欠であり、電気刺激療法やロボット支援物理療法などの新しいアプローチも報告されています。

 

7. 予後因子

CSCIの予後因子には多くの要素が影響しており、これらを適切に評価することが重要です。例えば、患者の体重指数、MRIでの脊髄信号強度、入院時のASIA(American Spinal Injury Association)グレード、合併症、OPLLの有無などが予後に関連しています。

 

8. 今後の展望: 評価方法の確立と継続的な研究の必要性

現在、CSCI患者における手術の適応やタイミングの確定的な指針は存在しません。将来的な研究では、患者の神経学的な予後を早期に予測し、治療戦略を適切に選択するための客観的な評価方法の確立が求められます。MRIの他にも機械学習やバイオマーカー、画像技術などが有望な手段となり得ます。

 

結論

CSCI患者の管理は未だ道半ばであり、手術の優越性や最適なタイミングに関する疑問が残ります。今後の継続的な研究が、患者の予後をより正確に予測し、治療の方針を導く手助けとなることが期待されます。手術治療がモーター機能回復だけでなく、QOLの向上にも寄与するかどうかについても検証が必要であり、患者全体の健康と生活の質向上に向けての新たな展望が期待されます。