【共有資料の振り返り】持続的腎代替療法(CRRT)
我々が勤務している施設では,資料の共有が行われます.
今回はこれです.
《用語》
・CRRT: 持続的腎代替療法
・CKRT: 持続的腎代替療法
・IRRT: 間欠的腎代替療法
・IKRT: 間欠的腎代替療法
・CVVH: 持続的静脈ー静脈濾過
・CVVHD: 持続的静脈ー静脈透析
・CVVHDF: 持続的静脈ー静脈濾過透析
※ 以前は急性腎不全(Acute renal failure: ARF)と呼ばれていましたが,急性腎傷害/障害(Acute kidney injury: AKI)と定義が決まっています.
※この頃から,Kidneyという用語を好んで使うようになり,RRTもKRTという用語が使われるようになってきています
《背景》
持続的に行う腎代替療法は,CRRTと呼ばれています.
近年では「Kydney」という言葉を好んで使うようになってきており,CKRTと呼ばれることもあります.
CRRTの特徴は「持続的」に行えることです.
以前は,この「ゆっくりとした」濾過や透析がいろんな観点から(例えば,脳圧・脱水によるAKIの回復,血行動態など)から良いのではないかとされてきました.
しかし,いろんな研究の結果大きな差はなく,KDIGOのガイドラインでも脳圧管理が必要な症例や循環動態が不安定な症例では,IRRTを行うことに言及されているようです.
いわゆる持続的に行うCRRTと中間型のSLEDと呼ばれる週6回程度行う腎代替療法では,死亡率などに差がないことが示されています.
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejmoa0802639
《抗凝固療法》
抗凝固療法は,日本では主にナファモスタット(NM)とヘパリン(NMH)が使用されています.
国際的には,クエン酸が使われています.
筆者の以前の施設(約20年前)では,クエン酸で抗凝固療法を行っていました.
クエン酸は,回路内だけを抗凝固して,回路の出口でCaでリバースするやり方です.
赤血球輸血の場合は,クエン酸が入っているので固りません.
そのため,大量輸血を行うとクエン酸の投与を行っている状態になるので,Caの補充が必要になります.
余談ですが,Ca++は1未満で補充することが多いです.
ヘパリンでも,プロタミンで回路内だけを抗凝固することも可能ですが,クエン酸が一般的です.
クエン酸は肝不全では代謝障害となるため,基本的には使用できません.
当然,ヘパリンの合併症であるHITも起こりません.
《回路寿命》
日本の場合は,1日1回交換することが多いようです.
以前の施設では,使えるだけ使っていました.
国際的には,72時間以内を目処に使えるだけ使うという方法が一般的です.
なんで日本の場合は,1日1回交換なのかが謎です(施設によります).
1日1回交換しないと,回路つまりがでると言うのが理由のようです.
回路の寿命に関しては,抗凝固療法が大きなウエイトを占めています.
先にも書いたように,日本ではほとんどNMを使用しており,凝固機能が延長していた場合でも,NMによる抗凝固療法を継続していることが多いように思います.
また,全身ヘパリンを使用している場合でも,NMを使用していることもあります.
すなわち,日本ではNo anticoagulationとう選択肢が懐疑的なのかな,と思います.
抗凝固療法以外に回路寿命を延ばすには,前希釈も1つ選択肢になります.
全希釈とは,フィルター前に置換液をおくやり方です.
そのため,フィルターを通るときには希釈された血液のため効率は悪くなります.
一方,後希釈の場合はフィルターライフは短くなりますが,効率は悪くなります.
このあたりの選択は,一長一短なのでIRRTなのかCRRTなのかという議論と似ています.
CRRTの場合は,持続的に行えるのでDown time(RRTを行っていない時間)が極めて少なくなります.
IRRTを補えるだけの効率はありませんが,CRRTの利点の1つです.
一方で,CRRTの場合は持続的に行うことで,微細な水分調整を行うことも可能になります.
じつはこの辺のCRRT traumaともいうべき,有害事象も問題になります.
適応は,Renal indicationと呼ばれる腎臓が悪い人に行われるべきで,Non renal indicationを行うとKの補充など有害事象が生じます.
カテーテルの選択も実は重要で,臨床的にはカテーテルの問題でCRRTのDown timeが増えてしまうこともしばしばあります.
また,なれないナースが管理すると回路を止めたままにすることで,回路がすぐに詰まってしまうことになります.
CRRTに限りませんが,機械的臓器サポートはそれなりに習熟し,対応可能な人材が近くにいることはとても重要だと思います.
また,回路の詰まりはモニタリング(回路圧やTMPなど)を行うことである程度推測が可能です.