脊髄損傷後の血圧管理
《生理学的特徴》
1つは物理的に圧迫を受けている脊髄損傷の場合は,当然ですが早急に除圧が必要になります.
2つ目は,損傷を受けた部位は腫れてくるということです.
例えば,顔面を殴打されると顔面が腫れるのと同じく,脊髄も損傷を受けると腫れて来るということです.
これは脳環流でも同じことが言えますが,脳圧が高い場合は同じ血圧でも,血圧が高い方が環流圧の維持には役に立つということがあります.
ちなみに,古い小規模研究ではドパミンは脳圧を上げるのではないかという研究も存在します.
https://ccforum.biomedcentral.com/articles/10.1186/ccf-2001-73300
以前は,ケタミンなども同様に脳圧を上げるのではないかという報告が多かったのですが,近年では小児領域の研究ではむしろ脳圧を下げるのではないかというものまで様々です.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19569909/
脳の場合は,2次性脳損傷の予防が集中治療管理のメインテーマになります.
1次性というのは,最初の外傷に起こる損傷で,2次性というのは例えば脳圧を上げるような行為(水平仰臥位,高炭酸ガス血症,血糖値上昇,低血圧,低Naなどなど)があります.
最近MANTLE bundleというわかりやすいバンドルも提唱されています.
https://ccforum.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13054-022-04242-3
同じく脊髄も閉鎖空間ですので,脊髄腔の腫脹により虚血に陥ることになります.
この腫脹の期間が通常は5-7日間と言われていますので,この間は平均血圧(MAP)を適切に管理しましょうということです.
生理学的に考えると,分布異常がメインですのでノルアドレナリンを使用して,MAPを85-90mmHgに維持する戦略を取ります.
この間は,動脈圧ラインを留置して管理を行うことが多いと思います.
https://thejns.org/focus/view/journals/neurosurg-focus/43/5/article-pE20.xml