〇〇病院診療看護師(NP)のお勉強用

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敗血症時のエスモロール(β遮断薬)の適応

背景

頻脈が良くないというのはよく分かるのですが,シチュエーション次第ということになります.

ATPを働かせるためには,酸素が必要で,酸素をさいぼうに送り届けるのが「ヘモグロビンと心拍出量と酸素飽和度」と言われています.

 

3つの因子

つまり,この3つの因子のうちでバランスを取り合っています.

例えば,貧血の場合は心拍出量が増加します.

心拍出量は,1回拍出量x心拍数なので貧血の場合は,1回拍出量が増加し頻脈にもなります.

このように頻脈で代償しているのに,β遮断薬を使用すると心拍出量が不足します.

それでも心拍出量を減らしたいというケースはあまりないでしょうが,もしそのようなシチュエーションがある場合は,赤血球輸血を行うことで均衡が保てるかもしれません.

その辺のバランスを見るのが,SCVO2だったり乳酸だったりCO2 gapだったりします(CO2gapは心拍出量のモニタリングですが).

 

今回の研究

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

NP Yaからの共有です.

敗血症の場合はHRを減らすことは有用なのか?という問いがあります.

有用性を示唆する研究も存在しますが標準治療ではありません.

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

集中治療を必要とする患者さんは,動脈ラインを通常留置します.

これは,採血と血圧モニタリングの目的で留置されます.

実は,このような用途以外の使い道も多くて,心拍出量や変化率(SVV,PPV)なども特殊な機械に繋げばモニタリングできます.

輸液の必要性がドラスティックに変化する集中治療のシチュエーションの場合は,このような機器はなくてはならない(情報を増やす)ものとなってきています.

 

動脈ライン波形からわかること

動脈ラインの圧波形からわかることは,収縮期血圧拡張期血圧,他には大動脈弁が閉鎖するDictotic notchがあります.

Dictotic notchは,右側に移動する程1回拍出量は増加します.

集中治療では「圧と心拍出量」いずれも重要になります.

 

血圧を上げるには,ノルアドレナリンや輸液が選択されますが,Aラインの圧波形からもある程度推測可能です.

例えば,輸液を行うことで心拍出量が増加すれば,Dictotic notchは右側に移動します.

つまり,心拍出量が増加した結果血圧が増加するというパターンです.

 

逆に輸液の量が少ない場合は,Dictotic notchは左側になりAラインの波形もNarrowになります.

このような場合にノルアドレナリンを増量すると,AラインはよりNarrowな波形となります.

Narrowになるほど,Overshootも増えます.

波形を見ずに数値だけを見ていると,フォローの採血で乳酸が上昇している循環不全になっている,ということもあるかもしれません.

モニターや検査は使うなら,ちゃんと使うべきということですね.

 

以下,ChatGPT

敗血症では、心拍数(HR)の低下は治療の目標となりますが、非補償性頻脈の応答者と補償的な非補償性頻脈の非応答者を識別することは困難です。本研究では、心筋収縮力と所与のアフターロードの結合を反映する収縮期圧と二尖弁圧差(SDPdifference)の差が、頻脈の原因を識別する能力を持つかどうかを検証しました。

45人の持続的な頻脈を持つ敗血症性ショック患者を対象にしたこの事後解析では、4時間のエスモロール投与後の動脈dP/dtmaxの変動に基づいて患者を分類し、HRを95回/分未満に維持するためのエスモロール投与後に血流動態応答の特徴を特定しました。グループ割り当てには、0.9 mm Hg ms-1のカットオフ値を使用しました。

結果として、HRを減少させた後、動脈dP/dtmaxは23人の患者ではカットオフ値を上回ったままであり、一方、22人の患者ではカットオフ値を下回りました(0.99 [0.37]から0.63 [0.16] mm Hg ms-1への減少、平均[標準偏差]、P<0.001)。基準時点では、エスモロール投与後にdP/dtmaxが減少した患者群は、dP/dtmaxが上昇した患者群よりも低いSDPdifferenceを示しました(それぞれ40 [19] vs 53 [16] mm Hg、P<0.01)。高いdP/dtmaxグループではSDPdifferenceはエスモロール投与後も変化せず(49 [16] mm Hg)、一方で低いdP/dtmaxを示した患者では有意に減少しました(29 [11] mm Hg、P<0.001)。後者の患者では、HRの低下により心拍出量が有意に低下し、SVは変わらないままでしたが、高いdP/dtmaxを示した患者ではSVが増加しました(48 [12]から67 [14] ml、P<0.001)、心拍出量は維持されました。

結論として、SDPdifferenceの減少によって補償的な頻脈と非補償的な頻脈を識別することができ、従来の超音波心エコー検査のパラメータでは検出できない心筋収縮力の隠れた低下が明らかになり、HR低下後にエスモロールによって悪化することが示唆されました。