【NP TatのMKSAP】経口糖尿病治療薬
【key point】
・米国糖尿病協会は、若い健康な患者と、妊娠していない女性ではヘモグロビン A1c の目標を 7% 未満にすることを推奨している。
• 心血管への効果が実証されているグルカゴン様ペプチド 1 受容体アゴニスト【GLPー1】またはナトリウム-グルコース共輸送体 2 阻害剤は[SGLT2]、2 型糖尿病および確立されたアテローム性動脈硬化性心血管疾患 (ASCVD) または ASCVD の複数の危険因子を有する患者において、重篤な心血管イベントのリスクを軽減するために推奨される。
【私見】
BMI30以上は運動療法は禁忌である。そのため、血糖効果作用だけでなく、肥満患者においてはどの糖尿病薬で体重が増加するか理解しておく必要がある。
【コメントRI】
当たり前の話ですが,治療を行う場合は先を見据える必要があります.
例えば,血圧を5mmHg下げた場合にどのような長期的Benefitがあるのか?というような問いに近いです.
糖尿病も同じで,糖尿病がなんで悪いのかというと,大血管リスクを上げるからということがあります(他にもたくさんありますが).
つまり,目先の血糖ばかりを下げていたとしても,長期的なアウトカムは改善しないということになります.
この分野のことはあまりわかりませんが,過去に様々な研究が行われ,ACCORD・ADVANCE研究はまだ記憶に新しいところでもあります(2008NEJM).
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMe0804182
特にACCORD研究は,色んなところで話題になり血糖値を下げたほうが死亡率が上昇するというとても示唆に富むメッセージを残してくれました.
一方集中治療領域でも,Intensie insulin therapy(Leuven I/II)が話題になりました(2001・2006NEJM).
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejmoa011300
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejmoa052521
この治療法は,IITと呼称され世界中に流布しました.
血糖値を調整するというコンセプト自体は,とても良いことなのですがその後,Glucontrol・VISEPなどの相反する結果が続き,NICE sugarで終焉したような気がします.
https://link.springer.com/article/10.1007/s00134-009-1585-2
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejmoa070716
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejmoa0810625
筆者の体験では,2003年と現代では全く変わらない血糖管理を行っています.
別に私が選択したわけではないのですが,世界標準とはなにか?ということを意識していれば,極端に間違った治療法を選択することはないのだと,今だからこそ逆に痛感させられます.
話がICUにそれましたが,現代ではSGLT-2全盛の時代と言えます.
Magil bulletはないと思っていたのですが,どうやら魔法のくすりかもしれません.
とはいえ,正常血糖ケトアシドーシスや尿路感染症など,それなりの頻度で弊害としては散見されます.
とりあえず入れておけばよい薬ではなく,注意して使う薬であることに違いはありません.
Das SR, Everett BM, Birtcher KK, et al. 2018 ACC expert consensus decision pathway on novel therapies for cardiovascular risk reduction in patients with type 2 diabetes and atherosclerotic cardiovascular disease: a report of the American College of Cardiology Task Force on Expert Consensus Decision Pathways. J Am Coll Cardiol. 2018:72:3200-3223. [PMID: 30497881] doi:10.1016/j.jacc.2018.09.020