肺動脈圧の遠隔モニタリングで慢性心不全の予後改善【MONITOR-HF 2023 Lancet】
感想
心不全患者さんは,そもそも診断がとてもむずかしいです.
診断に関しては,BNPやNT-ProBNPのおかげで,非専門医でもだいぶわかりやすくなったと思います.
で,心不全の場合は慢性疾患ですので,一度治療を行ってもまた悪くなる可能性が高く,多くの患者さんは入退院を繰り返している状況です.
そのため,ファンタスティック・フォーと言われる薬剤介入など,様々なエビデンスがこの循環器領域では創出されています.
ちなみに集中治療領域では,肺動脈カテーテルでの血行動態モニタリングは患者さんの予後を改善させることはできませんでした.
今回の研究は,慢性心不全患者さんに植込み型の肺動脈圧をモニタリングする事で,心不全再入院や死亡率などの予後を改善することができるかを検討した研究になります.
これからは,浮腫や体重などの所見に加えて,コントロール不良な慢性心不全患者さんには,このような血行動態モニタリングの導入が検討されるのかもしれません.
とはいえ,まだ日本では使えないようです.
以下ChatGPT
この研究は、心不全患者における血行動態モニタリングの効果について、アメリカ合衆国以外の医療システムで行われた無作為化試験の結果を提供しています。現代のガイドラインに基づいた適切な治療を受けている患者を対象に、長期の追跡を行いました。
MONITOR-HFは、オープンラベルの無作為化試験で、オランダの25の医療センターで行われました。対象となる患者は、心不全のニューヨークハート協会分類III度を有し、以前に心不全で入院したことがある患者で、駆出率に関係なく選択されました。患者はヘモダイナミックモニタリング(CardioMEMS-HFシステム、Abbott Laboratories、Abbott Park、IL、USA)または標準治療にランダムに割り当てられました。すべての患者は3か月および6か月ごとに診察を受け、その後も48か月まで6か月ごとに診察を受ける予定でした。主要評価項目は、12か月時点でのKansas City心筋症質問票(KCCQ)全体的な要約スコアの平均差でした。すべての分析は意図治療分析で行われました。この試験は、International Clinical Trials Registry Platformの臨床試験登録番号NTR7673(NL7430)で事前に登録されました。
2022年1月14日までに、348人の患者をCardioMEMS-HF群(n=176 [51%])または対照群(n=172 [49%])に無作為に割り当てました。中央値年齢は69歳(IQR 61-75)で、中央値駆出率は30%(23-40)でした。12か月時点でのKCCQ全体的な要約スコアの平均変化の差は7.13(95%CI 1.51-12.75;p=0.013)であり、グループ間で有意差がありました(CardioMEMS群では+7.05、p=0.0014、標準治療群では-0.08、p=0.97)。反応解析では、KCCQ全体的な要約スコアが少なくとも5ポイント改善するオッズ比(OR)は1.69(95%CI 1.01-2.83;p=0.046)であり、少なくとも5ポイント悪化するORは0.45(0.26-0.77;p=0.0035)でした。デバイス関連またはシステム関連の合併症やセンサーの故障の発生率は、それぞれ97.7%および98.8%でした。
解釈としては、血行動態モニタリングが、現代のガイドラインに基づいて中程度から重度の心不全患者の生活の質を大幅に改善し、心不全の入院を減少させることが示されました。これらの結果は、この技術に関する総合的なエビデンスに貢献し、ガイドラインの推奨事項や遠隔肺動脈圧モニタリングの実施に影響を与える可能性があります。
この研究は、オランダの保健省、保健医療機関(Zorginstituut)、およびAbbott Laboratoriesの支援によって行われました。