PACER Dutch Trial (NEJM 2023)CVカテーテル留置前の血小板輸血は必要か?
血小板低値と中心静脈カテーテル(CV)
そもそも中心静脈ラインが必要な患者さんの多くは,重症患者です.
重症患者の場合は,血小板がよく下がります.
血小板の寿命は10日程度とされています.
重症患者の場合は,播種性血管内凝固症候群(DIC)と呼ばれる場合が多いです.
DICは名前はよく聞きますが,臨床的にはあんまり役に立たない概念とされています.
DICは原病の悪化が原因なので,原病を良くしないとDICも良くなりません.
そのため,臨床的にはDICを疑うシチュエーションだとしても,原疾患の治療が優先されます.
血小板減少で見逃してはいけないものは,自己免疫が絡むようなTMAと呼ばれる病態があります.
そもそも集中治療室に入室したときは血小板に異常がないのに,急にTMAを起こすとは考えづらいのですが,目視検査を提出します.
目視検査では破砕赤血球を確認します.
通常,TMAの場合は破砕赤血球を生じます.
もう一つは,血小板凝集などでの犠牲血小板減少です.
この場合は目視検査に加え,EDTAスピッツでの採血も行うことが多いです.
もう一つは,HIT(ヘパリン起因性血小板減少症)です.
重症患者の場合は,ヘパリンを使うことが多いので鑑別に上がります.
HITの場合は,4Tsスコアを計算し4点くらいから可能性が高くなります.
通常は,HIT抗体を提出します.
HITもI型とII型があり,対応が必要なのは主にII型になります.
臨床的には,ヘパリンを使用して5日目くらいから血小板減少を認める場合は,HITの可能性を考えて4Tsスコアを計算する,といった感じになります.
今回の研究
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2214322
血小板が低値の場合にCV留置を行うのは,出血合併症を増やすかどうか,つまり臨床的に行われている血小板輸血を行ってからCV留置を行うべきかどうかというテーマです.
血小板輸血の適応
そもそもですが,血小板輸血に際してはある程度閾値が決まっています.
大まかには,以下の通りです.
・頭蓋内出血,眼科出血 >10万
・出血傾向,手術など侵襲的処置 >5万
・出血傾向のない場合 >1万
詳細は成書を参照して貰えれば良いのですが,大まかにこのような感じで輸血が選択されます.
結果
CV留置が必要で血小板が低値の症例で,血小板輸血を行ってからCV留置を行う場合と,血小板低値のまま輸血を行う場合で比較されました.
主要評価項目は,グレード1-2のカテーテル関連出血とされました.
非劣性試験のため,Per-protocol解析が行われ,非劣性マージンは90%信頼区間の上限3.5に設定されました.
373件が解析対象となり,輸血群で約6%,輸血なしの群で約12%にグレード1-2の出血を認めました.
結論
CV留置の際は,血小板5万以上という現在行っているプラクティスでよさそう
ちなみにこのデザインがなぜ非劣性なのは,きちんと読み込んでいないのでわかりません
このような臨書に即したデザインで解析対象も400に満たないものですが,NEJMに掲載されるということは,とても教育的メッセージを内包していると言えるでしょう.