【CANVAS 2023JAMA】胆癌患者の繰り返す静脈血栓塞栓症予防
背景
VTE(静脈血栓塞栓症)は,重症患者に多いです.
他では骨盤内の手術操作を伴うものや,胆がん患者でも増えます.
古典的には,ウィルヒョウの3徴が有名です.
うっ滞・過凝固・血管内皮障害の3つです.
そのため,予防を行います.
予防は,抗血小板剤のアスピリンの有用性も示されています.
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2205973
基本的には,抗凝固療法が行われます.
入院中の場合は,ヘパリンカルシウムの皮下注射やIPCと呼ばれる下肢圧迫装置などが使用されます.
ケース次第では,ヘパリンの持続投与も行われたり,低分子ヘパリンなども使用されるかもしれません.
低分子ヘパリンの場合は,モニタリングが難しいので調節性が良いとは言えません.
そのため,未分画ヘパリンがよく使用されます.
非劣性試験
今回の研究は,胆癌患者さんのVTE予防にDOACと低分子ヘパリンを比較した非劣性研究になります.
非劣性研究の場合は,優越性を示す試験ではないので,統計解析がやや複雑になります.
非劣性マージンというものを設定しますが,このマージンの決め方は各試験により異なります.
非劣性試験を端的に表現すると,Aという有用性の示された薬剤があり,Bという新規の薬剤を使用した時に,Bという薬剤は既存のAという薬剤に劣っていないことを証明するための試験になります.
これが優越性試験になると,Aという有用性のある薬剤と,Bという新薬を比較することになり,よくわかんない感じになります.
おそらく,Bの新薬の有効性がほんとにある場合は,いわゆる有意差はつかないという結果になるはずです.
しかし本当にAという薬剤がBの新薬に非劣性なのかどうかを証明するためには,有意差なしという優越性試験ではなく,非劣性試験を組む必要性があるようです.
今回の研究
Direct Oral Anticoagulations vs Low-Molecular-Weight Heparin and Recurrent VTE in Patients Woth Cancer A Randomized Contorolled Clinical Trial
結論としては,DOACでも良さそうです.
DOACの利点は,経口薬で調節性はありませんが,使いやすいと言えます.
一方のワルファリンは,調節性はモニタリングできますが,頻繁に投与量を調整する必要が特に導入直後は生じます.
DOACの場合は,出血イベントが起きたときには厄介です.
拮抗薬として,商品名オンデキサというものがありますが,1回300万円程かかる高価な薬剤ですが,効果があるので必要なときには使用せざるを得ない場合もあります.
以下ChatGPT
この研究は、がん患者における静脈血栓塞栓症(VTE)の再発を防ぐための直接経口抗凝固薬(DOAC)が、低分子量ヘパリンに非劣性であるかどうかを評価した非劣性ランダム化臨床試験です。
この研究には67のセンターから638人のがん患者が参加し、新たなVTEを有していました。DOAC群では6か月後の再発VTE率が6.1%、低分子量ヘパリン群では8.8%でした。差の上限信頼区間は非劣性限界(3%)を下回っていました。
結論として、がんとVTEを有する成人において、DOACは低分子量ヘパリンと比較して6か月の追跡期間中に再発VTEを防ぐために非劣性であることが示されました。
この研究は、がん患者における初回のVTEイベントの後、DOACと低分子量ヘパリンの再発VTEの予防効果および出血率を評価するために行われました。
クリニカルトライアル.gov登録番号:NCT02744092