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心房細動患者での周術期のヘパリン置換

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/nejmoa1501035

 

背景

心房細動患者が手術や侵襲的処置を受ける際、ワルファリン治療を一時中断することが必要であり、その際に周術期の抗凝固療法の選択が重要です。ワルファリンは血液を希釈させ、手術中の出血リスクを増加させるため、手術前に一時中断されます。その際、低分子量ヘパリンを用いた周術期の抗凝固療法が有用であるかどうかについては検討が必要でした。本研究では、この問いに答えるべく、動脈血栓塞栓症の予防と大量出血のリスクを評価しました。

方法

- ランダム化、二重盲検、プラセボ対照の臨床試験
- ワルファリン治療を一時中断する心房細動患者を対象に、950人が周術期の抗凝固療法なしのグループ、934人が低分子量ヘパリンを用いたグループにランダムに割り付け。
- 低分子量ヘパリンは手術の3日前から手術の24時間前まで、および手術の後5〜10日間にかけて、皮下注射で投与。
- ワルファリン治療は手術の5日前に中断され、手術後24時間以内に再開。患者のフォローアップは手術後30日間続けられた。

 

結果の詳細

- 動脈血栓塞栓症の発生率においては、周術期の抗凝固療法なしのグループは0.4%であったのに対し、低分子量ヘパリンを用いたグループでは0.3%となりました。統計的には差が認められませんでしたが、非劣性の観点からも差は見られませんでした(リスク差0.1%、95%信頼区間[-0.6 to 0.8]、P=0.01)。

- 大量出血のリスクに関しては、周術期の抗凝固療法なしのグループが1.3%であったのに対し、低分子量ヘパリンを用いたグループでは3.2%となりました。統計的に有意な差があり、低分子量ヘパリンを使用しない場合に大量出血のリスクが低減する傾向が見られました(相対リスク0.41、95%信頼区間[0.20 to 0.78]、P=0.005)。

考察

これらの結果から、低分子量ヘパリンを使用しない周術期の抗凝固療法が、動脈血栓塞栓症の発生率において非劣性を示し、同時に大量出血のリスクを低減させる効果が見られました。手術において、低分子量ヘパリンを使用しないことが適切である可能性があります。

結論

心房細動患者において、ワルファリン治療を一時中断する際に低分子量ヘパリンを使用しない周術期の抗凝固療法は、動脈血栓塞栓症の予防において効果的であり、かつ大量出血のリスクを低減させることが期待されます。【研究は米国国立心臓・肺・血液研究所(NHLBI)の支援を受けています】